相続放棄と形見分け
相続放棄と形見分け
相続人が相続放棄をする前に相続財産を処分した場合、単純承認(※)したものとみなされ、相続放棄することができなくなってしまいます。
「処分」とは、相続財産の経済的価値を有するかでどうかで判断することになります。
現在のところ、経済的に重要性を欠く形見分けであれば、相続財産の処分には該当しないといわれております。
判例のご紹介
山口地裁徳山支判昭和40年5月13日(家月18巻6号167頁)
被告等において、相続財産を調査あるいは直接にも間接にも占有管理する状態にはなく、又それを訴外甲等の血縁の者たちが、被告等に教えたりまた占有管理を移すこともなく、葬式の香典類に対しても手がつけられない事情のもとで、被告乙において、不動産、商品、衣類等が相当多額にあった訴外Aの相続財産の内より、僅かに形見の趣旨で背広上下、冬オーバー、スプリングコートと訴外Aの位牌を別けて貰って持帰り、その後申述受理前に更に被告丙の願いにより、被告乙において、訴外甲の血縁の者に事情を話して頼み時計、椅子2脚(1脚は足がおれているもの)の送付を受けて、受領したが、右の外に相続財産に手をつけたことのなかったことが認められる。前掲証人の証言中、右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。してみると、右の事情のもとにおいて、被告等の行為を指して、これが民法第921条第1号の処分にあたると考えることは到底出来ないところである。
用語解説
※単純承認(たんじゅんしょうにん)とは相続人が故人の相続財産を全て相続することをいいます。